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User Interview
nichinichi 川島善行シェフ

切り口が美しいと、
美味しさの着地点が狙いやすい。

Interview

芸人から、職人へ。
誰かから求められるパンを目指して。

ーnichinichiは、対面スタイルなのにお客様がピックアップするという、半対面スタイルなんですね。なぜこの形にしようと考えたんですか?

川島:スタッフがピックアップしてくれる一般的な対面式は、パンのことを気軽に質問できるのが大きなメリットだと思います。
でも、やっぱりパンって自分で選びたいじゃないですか。
こっちの方がちょっと大きい、とか。チーズが溢れてるパンにしたい!とか(笑)。人それぞれ、ビビッとくる子が違うと思うんです。
スタッフとのコミュニケーションも、自分で選ぶ楽しみも、両方叶えたい!と思って考えたのがこの“半対面スタイル”。
補充もしやすいですし、程よくコミュニケーションも取れて、結果的にはメリットの方が多かったと思います。
子どもが目をキラキラしながらトングを持って選んでいる姿を見ると、この形にしてよかったな、と思いますね。

ー川島さんがお店を出そうと思ったきっかけは?

川島:僕、若い頃にお笑い芸人を目指していたんです。
24歳のときに芸人の夢を諦めて意気消沈していた僕に、当時付き合っていた彼女がベーカリーで買ってきたパンを差し入れてくれたんです。それが、衝撃的な美味しさでした。
安くて大きくて、お腹を満たすためのパンしか食べたことのなかった僕にとって、世界がひっくり返るくらいの驚きと感動。
それがきっかけで彼女とパン屋巡りをするようになり、そのうち自分でも焼くようになり…と、パンの世界にどっぷりハマりました。
26歳のときに、いよいよパン屋で働き始めるんですが、当時はとにかく「もっと上手くなりたい」という思いだけで突き進んでいました。
パン作りは上達してたかもしれないですが、まだ仕事として、生業として、本当のパン職人にはなれてなかったと思うんです。

ー「生業としての職人」とは?

川島:パン屋って、パンを焼く仕事じゃなくて、パンを売る仕事なんですよ。
自分が焼きたいパンよりも、お客様がどんなパンを求めているのか?パン屋に何を求めてるか?の方がずっと重要。
今のお店には、僕がつくりたいパンはひとつもありません。理由はシンプルで、「つくりたいパンより、求められるパンを焼きたいから」。
あえて言うなら、お客様が欲しいと思うパンが、僕のつくりたいパンなのかもしれません。
例えば、「子どもが食パンの耳を残すんです」という声を聞いて「じゃあ、耳まで丸ごと食べたくなるくらい柔らかい食パンを焼いてみよう」って。
個人的にはハードなクラストの方が好みなんですけど、そんなのはお客様に関係ないんです。
うちの店は高加水のパンが多いですが、「パン食べてると、水分欲しくなるよね」という声がきっかけのひとつだったり。
「じゃあ、飲み物が必要ないくらい、水分量の多いパンを焼いてみよう!」という感じですね。
バゲットが細めなのも、「バケット好きの人は、きっとクラストを食べたいはず。とことんクラストを楽しめるように細くしてみよう」とか。
そんな風に、パンづくりをしています。

ーお客様の声が、そのまま商品に反映されているんですね。

川島:修行時代はこんなこと考えたこともなかったんです。
「自分らしい、美味しいパンを焼けるようになりたい」という一心でした。
でも独立を決めて、試作をスタートしたときに改めて「僕が焼きたいパンってなんだろう?」って考え始めたんです。
そしたら、「そもそも、なんでお店を出すことにしたんだっけ?」「どんなパンがつくりたいと思ってたんだっけ?」って、迷子になってしまって。
仮に焼きたいパンの方針が決まったところで、それが求められる場所がわからない、とも感じました。
ぐるぐる考えて辿り着いたのは「自分らしいパンではなくて、お客様が満足するパンを焼きたい」ということ。
焼くのは僕ですが、僕が毎日全部食べるわけじゃなくて、買って食べてくれるのはお客様です。
だから、僕が焼きたいのは、買い手が求めてくれるパン。
これは、店を出したときにようやく気づけたことでした。
うちで働いてくれているスタッフたちには、僕のこの考えはいつも伝えるようにしています。

ースタッフさんへも伝えているんですね。

川島:はい。修業時代にこの考え方や感覚を持っているか否かで、その後の職人としての在り方が変わってくると僕は思っています。
「自分らしいパン」を突き詰めていったとき、お客様の気持ちを置いてけぼりにしちゃいけないんです。
当たり前のことなんですけど、この感覚になれるかなれないか、その壁って結構分厚い。
職人気質であればあるほど、僕みたいに独立したときに悩んじゃうと思うんですよ。
だからいつもスタッフには、僕の考え方を共有したうえで、常にお客様が何を求めているのかを考えるように伝えています。
パンづくりを教えるのはそれからです。

パン想いで、職人想い。
優しくて美しい、パン切りナイフ。

ー波刃モンスターを使った感想を聞かせてください。

川島:初めて使ったときは、とにかく切れ味の良さに驚きました。
「なにこれ、めっちゃ切れる!」って、声に出てたかも(笑)。
波刃モンスターは、刃の入り方が違うんですよね。パンに当てて軽く力を入れるだけで、スッとスムーズに入っていく感じ。
切れ味の良い波刃包丁はこれまでもあったんですが、波が荒いものが多いので、もう少し力がいるというか、ここまでスムーズではないというか…。
言葉で説明するのは難しいんですが「スッと入っていって、思った通りに切り終わる」って感じかな。

ー「思った通りに切り終わる」?

川島:これ、多分無意識なんですけど、切る前に「こんな感じで切り分けたいな」とか「刃を何回入れ直したら最後まで切れるかな」とか、どんな風に切るかを、脳がイメージしてると思うんです。
でも、しっかり立ち上がったエッジや厚めのクラストが立ちはだかって「あれ、思ったように刃が入っていかない」ってことって結構あるんですよ。
切り分けてみたら、クラムが思ったより潰れてしまった、なんてことも。
でも波刃モンスターは、狙った通り、思った通りに切れるんです。「あれ、うまくいかない」ってことになりにくいな、と感じています。
無駄な力を入れたり、切るときに気を遣ったりしなくても、スッと刃が入ってサクッと切れて、思い通りに仕上がるんです。
パンに負担をかけずに美しく切れる、パン想い、職人想いのパン切りナイフだと思います。

ー波刃モンスターは、どんな場面で活躍していますか?

川島:うちは、水分量の多いパンがほとんど。中には100%を超えるものも結構あります。
高加水パンはクラストとクラムの差が大きいので、どう切っても切りづらいんです。
スライスしたときにパンがよれてしまったり、何度も刃を入れることで断面が波打ってしまったり…と、職人泣かせ。
せっかくフワフワに焼き上げても、潰れてダンゴみたいになっちゃったりとかね。焼きたてなら尚更です。
その点、波刃モンスターは、ふわふわモチモチのクラムもお手のもの。下までまっすぐに切り分けることができます。
あと、これだけ長いので、刃を何度も入れ直さなくてもいい、というのも大きな特長だと思います。

ー少ないストロークで切れる、ということですか?

川島:はい。何度も刃を入れ直すと、その筋がパンの表面に出てきてしまうんですよ。
後から見ても「あ、ここで刃を入れ直したな」ってわかるんですよね。
波刃モンスターは刃渡りが長いので、刃を入れ直さずにすっと一発引くだけで切れることの方が多いです。
なので、うちでは一般的なパン切りナイフで切れるような大きさのパンでも、波刃モンスターを使うことが多いです。
刃渡りが長いというのは、刃を入れ直さなくてもいい=綺麗に仕上がる、という利点がかなり大きいです。

ー断面の美しさは、味わいにも影響しますか?

川島:大きく影響します。
パンの繊維を無駄に壊さず、生地に余計なストレスをかけずに切り分けられると、断面が美しくなります。
綺麗だと、舌触りが良くなるんですよね。結果的に、口溶けの良いパンに仕上がると思っています。
パンを美味しいと思うのは、味や食感はもちろん、舌触りや喉越しも大切。
断面が綺麗な方が、美味しいパンになると思います。
一口パクッとかぶりついたときに、口の中に何グラム入るかで、味わいも美味しさも、口溶けも微妙に変わってくるんです。
咀嚼回数が変われば喉越しも変わりますしね。僕らはそこまで計算して、理想的な厚みに、均等に切り分けることも大切にしています。
パンを美しく切ることで、お客様がパンを食べたときに到達するおいしさの着地点が狙いやすいと思います。

ー今日は、とても大きなパンを焼いていただきました。やはり大きく焼くことでしか出せない美味しさってありますよね。

川島:小さく焼くパンに比べると、大きなパンの方が保水力が高くて日持ちするので、フランスとかだと大きなパンを買って少しずつ切り分けながら食べるのが日常だったりしますよね。
日を追うごとに少しずつ味わいも変化していきますし、大きなパンにしか出せない美味しさがあります。
お店でも、大きなパン出して切り売りをしてみたいという願望はありますね。
効率化ももちろんですが、「一個のパンをみんなで分け合って食べる」という文化というか…。
僕自身、そういうのが好きなんですよね。“同じ釜の飯を食う”、のような喜びが、パンにもあると思うんです。
小さな子どもも、サラリーマンも、おばあちゃんも、お互い全然知らない人が、元は同じパンだったものを食べてるのって、夢があると思うんですよね。
今後も店やイベントで大きなパンを焼いて、そういう文化や喜びを、パンを通してたくさんの人に知ってほしいと思っています。

nichinichi ニチニチ
川島善行
YOSHIYUKI KAWASHIMA

1982年、群馬県生まれ。元お笑い芸人、現パン職人という異例の経歴を持つ。
18歳で吉本興業の養成所に入り、芸人として活動したのち、26歳からパンの道へ。パン屋で働きながら「パン技術研究所」に入学し、理論から製パンを学ぶ。その後「365日」で修業を積み、2017年に新百合ヶ丘に「nichinichi」をオープン。国産小麦100%、地場野菜や地場卵を使用した「身体に優しくて美味しいパン」を焼く。ユニークで個性的なパン教室も開催し、ファンを集めている。

神奈川県川崎市麻生区万福寺4-8-4 ペルナ1F
044-819-6631
10:00~18:00(土・日曜、祝日は9:00~19:00)
※売り切れ次第終了
不定休
https://nichinichi.shop/